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なんの前ぶりもなくいきなり突進され、尻餅をつきそうになる。子供は力の加減ができないのだ。壊れた人形のように、おにいちゃん、おにいちゃんと足元にまとわりつかれた。 どうしていいのか対処に困っていると、父親が陽介の手を引く。 「さあ、お母さんのところに戻ろう。みんなでご飯だ」 「ご飯! お兄ちゃんとご飯!」 結局、太一も陽介と手をつながされ、完全に帰るタイミングを失った。 仕方なしに観念して歩くと、後ろで一つに髪を結わいている三十くらいの女性と目があった。 「ママ!」 陽介が走って抱きついたので、彼女が父の再婚相手なのだとすぐに判った。 「こんにちは。太一君、はじめまして。優実(ゆみ)です」 一回りも上のおっさんと結婚した物好きな女は、意外にも地味だがすらりとした美人だった。 自分の母親とはあまり似ていない。 こういう家庭に収まりそうな女が好きなら、初めからそういうのを選べよと意地悪く考える。
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