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「……ども」
小さく頭を下げると、優しく微笑まれた。
彼女なら、もっと良い男が掴めただろうに。男の趣味は悪いようだ。
「今日は、いっぱいお肉用意してきたんだからね。飲み物もあるから、どんどん食べて飲んでちょうだいね」
返事はしなかった。きっと心の中では、この年頃は扱い難いと思われているのだろうから。
バーベキューのセットの横には、二つもクーラーボックスがある。父親はその一つから、さっそく缶ビールを取り出した。
「太一は何飲むんだ? コーラか? ポカリとお茶もあるぞ」
「……コーラ」
父親から五百ミリのペットボトルごと受け取る。
「ぼくもコーラ!」
「だーめ。陽介は、りんごジュースがあるでしょう」
優実がクーラーボックスから、小さなジュースのパックを取り出した。
「おにいちゃんと同じのがいい」
「お兄ちゃんみたいに、もっと大人になったらね」
「じゃあ、パパと同じの」
「それは、もっと大人になってから」
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