407人が本棚に入れています
本棚に追加
掴んでいたカーディガンが、するりと指先をすり抜けていく。
遠ざかる背中を、今度は追いかけられなかった。
「……なんだよそれ……」
ホテル街に消えた2人がどうなるかなんて、考えなくても分かる。
きっとあの男は、蓬莱さんの細い体を好き勝手に貪り、彼もまた、それを喜んで受け入れるんだろう。
俺はまた、指を咥えて見ているだけ。
「……帰ろ」
ここに突っ立っていたって何も変わらないと、重たい足を引きずるように歩き出す。
隣を過ぎていく酔っ払いの声が、やけに耳を刺した。
最初のコメントを投稿しよう!