408人が本棚に入れています
本棚に追加
かろうじて月の光が差し込む薄暗い路地で、その男はあまりに異質だった。
焦げ茶色のマッシュヘアがビル風に揺らぎ、形のいい唇は諭すように弧を描く。すっと高い鼻筋と、アーモンドのように大きな瞳は、作りもののようで。
男にしておくには惜しいほど綺麗な、この顔。
どこかで、見たようなーー?
「お願い、見逃してあげて」
「っ、離してよっ」
ばっと男の腕を振りほどいた女は、掴まれていた手首を抑えて悔しそうに唇を噛む。
いくら3人とはいえ、男2人に挟まれてるんだ。
不利だと感じているんだろう。
「カツアゲも立派な犯罪だよ。君たちまだ学生でしょ? 今回は見逃してあげるから、早く帰りな」
カッとする彼女を宥めるように笑みを濃くした男の頬に、くっきりとえくぼが浮かぶ。
その途端、俺の頭を過ぎった影は、確かにこの人のもので。
最初のコメントを投稿しよう!