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かろうじて月の光が差し込む薄暗い路地で、その男はあまりに異質だった。 焦げ茶色のマッシュヘアがビル風に揺らぎ、形のいい唇は諭すように弧を描く。すっと高い鼻筋と、アーモンドのように大きな瞳は、作りもののようで。 男にしておくには惜しいほど綺麗な、この顔。 どこかで、見たようなーー? 「お願い、見逃してあげて」 「っ、離してよっ」 ばっと男の腕を振りほどいた女は、掴まれていた手首を抑えて悔しそうに唇を噛む。 いくら3人とはいえ、男2人に挟まれてるんだ。 不利だと感じているんだろう。 「カツアゲも立派な犯罪だよ。君たちまだ学生でしょ? 今回は見逃してあげるから、早く帰りな」 カッとする彼女を宥めるように笑みを濃くした男の頬に、くっきりとえくぼが浮かぶ。 その途端、俺の頭を過ぎった影は、確かにこの人のもので。
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