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やっぱり俺、どこかでこの人に会ったことがある。
絶対に知っている顔なんだけど、どこでーー。
「うるさいっ、偉そうに言わないでっ」
懲りずに彼女が腕を振り上げる。
ぱっと目を丸くしたまま動きを止めた彼に、俺は慌てて彼女の腕を掴んだ。
「やめろって言ってるだろ。見逃してくれるって言うんだから、さっさと帰れ」
「っ……なんなのよっ」
ギリッと歯を軋ませた女は俺の腕を振り払い、残りの2人を囃し立てて路地を走り抜けて行った。
バタバタと慌ただしい足跡が消えた途端、路地はシン……と静まり返る。
何か、言わないと。
頭の中で掛ける言葉をシュミレートする俺に、男はふっと息を吐いた。
「大丈夫だった? この辺りの治安って良くないから、気を付けないとダメだよ」
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