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今正体を明かしたって、俺になんのメリットもない。それなら、“初対面”のままでいるほうが得になる。 「なにそれ、男の俺にそういうこと言っても仕方ないと思うんだけど」 ケラケラと楽しそうに笑った彼に、ですよねと俺も笑い返す。 ひとしきり笑った彼は、ふーっと息を吐いて、表通りを振り返った。 「さて、それじゃあ俺はそろそろ行くね。気を付けて帰りなよ」 「っ、俺」 ひらりとカーディガンの裾が揺れる。 振り返りかけた彼が、踏み出した足を地に下ろした。 「俺、そこのイタリアンカフェでバイトしてるんです。奥の厨房で料理作ってて、だからその、良かったら来てください。お礼になるくらい、美味いですから」 男が不思議そうに瞬きを繰り返す。
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