ヘタレチキンの決戦

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部活終わり。 使った食器や畳の掃除があらかた終わってから、俺は名護さんを探した。 どこにいるんだ…… 全く見つからない。 もしかして、準備室か? 準備室には食器棚や懐紙など、茶道に使うあれこれが保管されている。備品室と言っても過言ではない。 もし人がいても驚かさないよう、そっとドアを開けると名護さんがいた。 名護さんは俺に気付くと、いつもの屈託ない笑顔を向けてきた。 「部活お疲れ。いつも姿勢いいよね。お手本にしてるよ。」 いきなり褒め言葉が出てきた。 嬉しいけど、俺が言いたいのはそれじゃない。 「ありがとう。これからもがんばるよ。」 お礼は忘れずに言っておこう。 「それで……あの。名護さんに頼みがあるんだけど」 「何?わたしにできることならなんでもどうぞ」 ヘタレチキンに言えるか!? 同級生といえど女子に、絡まれたくないんで一緒に帰ってくださいなんて言えるか!? 言うしかないんだよなぁ…。 俺の体質は不幸だ。 「…これから、部活終わりに一緒に帰ってくださいませんか?」 あ、やばい。敬語が出た。 引かれるよな…… と思ったけど。 「え、あ、わ、わたしっ!?ほ、他にもいろんな人いるよ…?」 当の名護さんは、ものすごい狼狽えようだった。 想像がつかなかったらしい。 そりゃそうか。 「無理はしなくていいんだけど、できればお願いしたいなって」 しっかりしろ俺!少女か!!どこのヒロインだよ!!! 「んー、、ちょっと、待って。」 そりゃそうか。いきなり言われても、同性ならまだしも異性だもんな。 普通に考えて二つ返事でOKしてくれるような人なんてそうそういな―― 「いいよ。」 俺の思考が一瞬止まった。 「へ?今、なんて・・・」 「だから、いいよ、って。一緒に帰るんでしょ?」 「あ、うん」 俺から頼んでおいて、用件を忘れていたと思われるような台詞は発したくなかったけれど、俺だって駄目でもともと、受け入れてもらえたらいいな、くらいの気持ちでいた。もちろん、受け入れてもらえるほうの期待は大きかったが。 まさか本当に受け入れてもらえるとは・・・。 「じゃ、支度が終わったら声かけてね。」 「今日から!?」 「え?そうじゃないの?」 「あ、いや、そうしてもらえたら助かる…」 頼んですぐに行動に移してもらえるところまではさすがに考えてなかった。というか、俺の拙い想像力じゃ思いつかなかったのだ。 「うん、じゃ、支度できたら声かけてね。」 「わかった。ありがとう」
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