スイーツ少女

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 キーンコーンカーンコーン。  朝のホームルームが始まる時間。友達のマリエとおしゃべりしていたあたしは、そそくさと席に着く。  あたしはナツキ。今現在、ケータイ小説にはまっている、高校二年生なのだ。ケータイ小説といえば、やっぱり激甘スイーツ系の話が定番で、甘く切ない恋が主流となっていて、あたしも、その虜になっている一人でもあった。  あたし、スイーツ大好き。朝ご飯はショートケーキに、昼ご飯はガトーショコラ。そして、夜ご飯にはフルーツパフェを食べ、夜食にはモンブランを平らげる。  そう、あたしは食生活から、スイーツに染まってるの。スイーツ脳と言われたって、全然へっちゃら。だって、なんでも「形から入れ」っていうじゃない。  そして、いずれはあたしもケータイ小説の世界のような、恋愛をしてみたい。白馬に乗ってなくてもいいから、素敵な王子様が目の前に現れるのを夢見て、今日もあたしは、スイーツを読みながらスイーツを食べる。 「えー、転校生を紹介します」  教壇に立つなり、シゲルはそう言った。シゲルとは担任のあだ名で、日に焼けていて歌が上手いから、そういうあだ名になったらしい。その意味が、あたしにはわからなかったが、みんながシゲルと呼んでいたので、あたしもシゲルと呼んだ。 「転校生のパオくんだ。仲良くしてくれ」 「パオパオ」  パオくんの第一声だった。というより、パオくんは「パオパオ」としかしゃべれないらしい。  パオくんは、インドネシア出身。浅黒い肌に、白い歯がキラリと光るイケメンだった。  そんなパオくんを見た瞬間、あたしの小さな胸は、はち切れそうなほど大きく鼓動していた。  ヤバイ、どうしよう。あたしパオくんに恋しちゃったかもしれない。早くこの想いを伝えないと、パオくんは誰かに取られちゃう。 そう思ったあたしは、パオくんが転校してきた初日に告白をした。 「付き合ってください」 「パオーン」  そして、その日のうちに、あたしはパオくんに抱かれた。
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