スイーツ少女

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 それからも、あたしとパオくんは、登下校はもちろん、お昼休みにも一緒にお弁当を食べた。毎朝、あたしが早起きして作ったお弁当を食べるのだ。  題して「スイーツ弁当スペシャル」。基本的にバームクーヘンを弁当箱に詰めただけだが、パオくんの健康のことも考え、生クリームとフルーツをトッピングした。たぶん、あたしって、いい奥さんになると思う。  しかし、幸せな反面、辛いこともあった。パオくんの彼女という定位置に居座っているあたしは、当然のことのように、イジメの標的になってしまっていた。  上履きを隠され、机の中にはゴミを入れられ、そのイジメは陰湿なものだった。でも、あたしは大丈夫。だって、パオくんがいるんだもの。  そんなある日のこと、いつものようにパオくんと下校していると、帰り道の途中に、マリエが立ちはだかっていた。 「ナツキ、パオくんとラブラブのようね」  嘲笑うかのように、マリエはそう言った。マリエとは友達で、パオくんとの交際も応援してくれている、無二の親友だった。そう思っていたのに、なぜマリエは、そんな言い方をするのだろうか。 「マリエ、どうしたの?」  あたしはマリエに問う。するとマリエは、これまでに聞いたこともないような高笑いをし、あたしではなく、パオくんにこう言った。 「もう、いいんじゃないの?」  マリエのこの言葉を皮切りに、あの優しかったパオくんの顔が、みるみるうちに邪悪なものへと豹変していった。そしてパオくんは、あたしにこう言った。 「ヘッヘッヘッ! けっこう楽しかったぜ。ナツキ」 「パ、パオくん?」  どうして? パオくんは「パオパオ」としかしゃべれないんじゃなかったの。いや、それより、マリエとどういう関係なのだろうか。あたしは、それが気になった。 「ナツキ。パオくんはねえ、あたしが本命なのよ」  マリエの言葉が、まるで五寸釘を打ち付けるかのように胸に突き刺さる。まるで、パオくんが、あたしとマリエと二股をしていて、あたしは遊びだったっという風に聞こえる。あたしは、パオくんに問いただした。 「パオくん、嘘よね? 嘘だと言って! ねえ、パオくん!」  しかし、パオくんの言葉は、あたしの期待には応えてはくれなかった。 「お前さ、重いんだよねー」  あたしの頭は真っ白──。今までの幸せな時間は、まやかしだったというのだろうか。
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