0人が本棚に入れています
本棚に追加
それからも、あたしとパオくんは、登下校はもちろん、お昼休みにも一緒にお弁当を食べた。毎朝、あたしが早起きして作ったお弁当を食べるのだ。
題して「スイーツ弁当スペシャル」。基本的にバームクーヘンを弁当箱に詰めただけだが、パオくんの健康のことも考え、生クリームとフルーツをトッピングした。たぶん、あたしって、いい奥さんになると思う。
しかし、幸せな反面、辛いこともあった。パオくんの彼女という定位置に居座っているあたしは、当然のことのように、イジメの標的になってしまっていた。
上履きを隠され、机の中にはゴミを入れられ、そのイジメは陰湿なものだった。でも、あたしは大丈夫。だって、パオくんがいるんだもの。
そんなある日のこと、いつものようにパオくんと下校していると、帰り道の途中に、マリエが立ちはだかっていた。
「ナツキ、パオくんとラブラブのようね」
嘲笑うかのように、マリエはそう言った。マリエとは友達で、パオくんとの交際も応援してくれている、無二の親友だった。そう思っていたのに、なぜマリエは、そんな言い方をするのだろうか。
「マリエ、どうしたの?」
あたしはマリエに問う。するとマリエは、これまでに聞いたこともないような高笑いをし、あたしではなく、パオくんにこう言った。
「もう、いいんじゃないの?」
マリエのこの言葉を皮切りに、あの優しかったパオくんの顔が、みるみるうちに邪悪なものへと豹変していった。そしてパオくんは、あたしにこう言った。
「ヘッヘッヘッ! けっこう楽しかったぜ。ナツキ」
「パ、パオくん?」
どうして? パオくんは「パオパオ」としかしゃべれないんじゃなかったの。いや、それより、マリエとどういう関係なのだろうか。あたしは、それが気になった。
「ナツキ。パオくんはねえ、あたしが本命なのよ」
マリエの言葉が、まるで五寸釘を打ち付けるかのように胸に突き刺さる。まるで、パオくんが、あたしとマリエと二股をしていて、あたしは遊びだったっという風に聞こえる。あたしは、パオくんに問いただした。
「パオくん、嘘よね? 嘘だと言って! ねえ、パオくん!」
しかし、パオくんの言葉は、あたしの期待には応えてはくれなかった。
「お前さ、重いんだよねー」
あたしの頭は真っ白──。今までの幸せな時間は、まやかしだったというのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!