スイーツ少女

4/5
前へ
/5ページ
次へ
「パオくん、最後にナツキに、いい思いをさせてあげたら?」  マリエがそう言うと、パオくんはあたしの肩を掴み、制服をビリビリに引き裂いた。 「イヤー!」  あたしは必死で抵抗を試みたが、パオくんに押さえ付けられ、どうしようもない状態。マリエは、タバコをふかしながら、パオくんに汚されていくあたしを見下していた。  とその時──、 「待てーい!」  どこからともなく、声がしたかと思えば、凄い衝撃音とともに、あたしの視界から、パオくんの姿が消えた。 「ナツキ、大丈夫か?」  そうあたしに声を掛けたのは、シゲルだった。  そのままシゲルは、パオくんに馬乗りになり、殴り続けた。あたしは、何が起こったのかわからずボー然とし、マリエがパオくんを置き去りにして走っていくのが見えた。  ひとしきりパオくん殴り終えると、シゲルは振り返り、あたしを抱きしめた。シゲルの胸の中で、瀕死状態のパオくんが見えた。 「シゲル、ありがとう。あたしホテルに行きたい」  そしてあたしは、シゲルに抱かれた。  シゲルは、教師という立場にもかかわらず、生徒のパオくんに暴行を働いた。あたしを助けるために。  あたしは、そんなシゲルが好きになった。そしてそれは、シゲルも同じ気持ちだった。教師と生徒の禁断の恋。やっぱり、これもスイーツなのかしら。  その後、シゲルはあたしにプロポーズをし、あたしの卒業を待って、結婚してくれると言ってくれた。そう、あたしの王子様は、実はシゲルだったのだ。  しかし、幸せな日々も長続きはしなかった。予想だにしない事態が、あたしとシゲルに襲い掛かってしまったのだ。  突然、シゲルが不治の病で入院してしまった。病名は、メソポタミアドリアン病。なんでも、一千万人にひとりという割合で発症する病気で、かかったら最後、命はないらしい。  当然のように、あたしは入院しているシゲルに付き添う日々を送った。  病院のベッドに横たわるシゲル。あたしは、そんなシゲルを見つめ、こう言った。 「あたしを抱いて」  そして、あたしとシゲルは一夜をともにし、翌朝、シゲルは逝ってしまった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加