この素晴らしいネットの世界に愛を込めて

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 そういえば、元カレはネットが嫌いだった。あたしが、ネットでブログを書いていると知った元カレは、公園にある岩をめくり上げ、その下で群がる虫を指差し「ほら、ここがお前のいる世界だよ」と笑っていたので、思い切り張り倒してやった。別れた理由も、それだった。  電車の中、ケータイの画面を見つめるあたし。コメントのひとつひとつを読みながら、幸せを感じるあたし。  あたしが、特別なわけではない。みんな、ケータイを開いて同じことをしているに決まっている。あたしはこの風景に、完全に同化していることだろう。  と思っていたその時──、あたしは自分のお尻に、猛烈な違和感を覚えていた。撫で回すように、いやらしく動くその手つきは、明かに意図的なものを感じさせた。 「痴漢だ」  そう思ったあたしは、そのままの状態で、次の駅に着くのを待った。そして駅に着き、ドアが開いたと同時に、その手をむんずと掴み、電車から引きずり降ろした。
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