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その痴漢、見たところ、中年のサラリーマンのようで、予想外の展開に目をまるくさせ、おどおどしていた。中間管理職のストレスだかなんだか知らないが、あたしの高貴なお尻を触るとはいい度胸をしている。
「この人、痴漢です!」
近くにいた駅員にそう叫んだ途端、そいつはあたしの手を振りほどき、逃げようとした。
あたしは「逃がすか」という思いで、再びそいつの手を掴み、持っていたアタッシュケースの角を、鼻っ柱に叩きつけた。
ゴキィという鈍い音。鼻血がシャワーのように吹き出し、そいつは倒れ込んだ。もしかしたら、鼻の骨が折れたかもしれない。
苦しみ、のたうちまわった揚句に、駅員に連行される痴漢を見送ると、あたしはケータイを開いた。
さて、コメントに返事しなきゃ。
だって、この腐れきった生き地獄なんかより、素敵な世界なんだから。
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