わたしは『ヒーロー』

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わたしは『ヒーロー』

「わたしのしゅみは『ヒーロー』です」 壇上に立つ女性教師に名前を呼ばれた少女は、元気よく呼びかけに答えて立ち上がると、先程まで書いていた原稿用紙を目の前に掲げながら、最初の一行を元気よく発表し始める。 黒板には今日の作文のタイトルなのだろう、『ぼくの・わたしのしゅみ』と書かれた白文字が黒板に一行だけ書かれており、緑の青々とした長方形の板には、それ以外の色はない。 少女は一行を読み終わったところで、きゅっと小さな口を真一文字に引き締める。 周りの子供たちはどうしたんだろうと少女を見るが、少女は何かに迷っているように視線を彷徨わせると、原稿用紙越しに壇上の女性を見る。 「わたしは……『ヒーロー』になるのが夢です」 ヒーローは誰でも出来るものじゃないので、今は見習いだと言われました。私はまだヒーローになれてないし、先生が好きで何度もやる事は趣味だと言っていたから、趣味なんじゃないかなと思いました。 趣味は大事なものだと先生も言っていたし、ヒーローも大事だと言われていたから、これしか思いつかなかったんです。と、今度は窺うように女性教師を見れば、見られた方は、子供は誰しもヒーローやヒロインに憧れるのを理解してか「大丈夫よ。どんなヒーローなのか教えて頂戴」と優しく促す。
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