妻の辻褄

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社長室を出ると 彼女が立ち上がり 俺をエレベーターまで見送ってくれる 並んで歩く彼女に 「菊野さん…珈琲美味しかったです」 声をかけると 彼女は、恥ずかしそうに 「ありがとうございます」 小さな声で礼を言った こんな女も たまには悪くないな… いつもの悪い癖が出てしまう 「菊野さんは珈琲がお好きなんですね 良かったら お勧めの専門店があるので ご一緒しませんか?」 名刺を素早く彼女に差し出すと 慌てて彼女も名刺入れに手を伸ばし 名刺を交換した 「裏面にアドレス書いてあるので 何時でも連絡下さい」 彼女は はい と、小さく頷き エレベーターのボタンを押す 貰った名刺を片付けようと 視線を落とすと 菊野ではなく 菱谷と記されていた 「…菊乃さんだったんですね てっきり、上のお名前かと」 「お気になさらないで下さい」 「僕も、菊乃さんと… お呼びしてもいいですか?」
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