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午前零時三十分──。
冬の凍てつく寒さもなんのその。銃器密売組織の幹部の行方を追っていた俺は、犯人の目撃情報をキャッチし、ネオンままたく繁華街へと足を向かわせた。
そして、カジノバーで女をはべらせ豪遊している犯人を発見。繁華街から入り込んだ、寂れた路地裏へと追い詰めるまでに成功した。
さて、あとはこいつを逮捕するだけだ。
「動くな!」
俺の相棒、44マグナムが犯人をロックオンした。すると犯人は両手を挙げ、観念した様子でゆっくりと振り向き、愛想笑いをしていた。
「へへへ旦那。そんな物騒なもの、おろしてくださいよ」
俺のマグナムに恐れをなしたようだ。なんて素直な奴なんだ。
だが、マグナムをおろし、手錠を出そうとした刹那の瞬間、犯人が懐に手を忍ばせた。
「き、貴様!」
俺は慌ててマグナムを構え直し、再び犯人を捉えた。と同時に犯人の銃口も俺を捉えていた。
犯人の銃は、トカレフ型の改造銃。恐らく台湾からの密輸品だろう。銃器密売を商売にしているだけあって、こいつもなかなか物騒なものを持ってやがる。
立場が同等になったことにより、一気に緊張が高まる。互いにピクリとも動くことができず、吐く息が綿菓子のように、冷たい空気に溶けていく──、ただそれだけだった。
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