タイムマシーンに乗って

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 私は別段、天才でもなければ、有能な科学者でもない。安い給料でこき使われてる、普通のサラリーマンだ。では、こんな私がなぜ、タイムマシーンを作ろうと思ったのか。それには、マリアナ海溝よりも深い事情がある。  実は私は、今の妻と結婚したことを後悔しているのだ。  聞くも涙、語るも涙な話だが、まあ聞いてほしい。私の妻は、とんでもないグータラ妻なのだ。食事の支度、洗濯、掃除はもちろんしない。ずっと、お気に入りのソファーに寝転がり、テレビを見ながら煎餅を食う。決して、その場所から動かない。というか、動いたのを見たことがない。  まさにこれは「動かざるごと妻の如し」。風林火山ならぬ、風林火妻と呼ぶにふさわしい光景だ。  結婚した当初の妻は美しかった。あれから二十五年。今となっては、その面影は微塵も感じさせないほどの豹変ぶりである。結婚当初の妻を動物に例えるならば、機敏な動きでぴょんぴょんと跳びはねる、可愛いウサギちゃん。それが今では、まったく動かない、太ったナマケモノちゃんになってしまったのだ。
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