タイムマシーンに乗って

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 妻と出会ったのは、私が大学生の頃──。告白してきたのは妻のほうからだった。しかし、その当時、私には付き合っている彼女がいた。  私は、悪いと思いつつも、妻と彼女を両天秤にかけた。彼女は妻に比べたら、見劣りはしたが、私に尽くしてくれるいい女だった。だが、私も若かったのだろう。彼女に別れを告げ、見た目がいい妻のほうを選んでしまったのだ。  そして、大学を卒業し、就職したところで、私と妻は結婚し、一人の息子を授かった。  それからだ、妻が変わってしまったのは──。  妻は、子供を産んだ途端に太り出した。まるで、浮輪を膨らませるポンプでもついているかのように、ぶくぶくぶくぶく太る一方だった。太るだけならまだしも、それに準じて、動くことすら面倒なのか知らないが、ソファーの上からピクリとも動かなくなってしまった。  当然のように、私は会社に勤めながらも、家事全般をこなした。息子の世話をしたのも、妻ではない。私だ。私が育てたのだ。  そしてようやく、息子も独り立ちしてくれたので、ここでふと、怒涛のように駆け巡った結婚生活を振り返って、私はこう思う。 「大学の頃へ戻って、やり直したい」と。  そう、あの時は、やはり彼女と別れるべきではなかったのだ。彼女と結婚していれば、私はこんなに苦労することは、なかったはず。  その思いが、私をタイムマシーンの制作へと駆り立てた。もちろん、過去の自分に会い、彼女と別れたら不幸になるとアドバイスするために。
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