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「どんな感じだった?」
満足げに男は問う。
「あたたかかったです」
僕は正直に答える。
「そうだろうな」
男がそう言った直後、固唾を飲んで見守っていた人々が、一斉に歓喜の声をあげた。親方は目に涙を浮かべ、女将さんや女の子に至っては号泣をしていた。わけがわからなかったが、なぜか僕は清々しい気持ちになっていた。
「じゃあ、おあいそをしてくれ」
男は、寿司の状態のまま、パンツとジーンズを穿き、カウンターから飛び下りた。そして、あがりを一気に飲み干した後、こう言い残して颯爽とレジへと向かった。
「もう立派な寿司職人だな」
涙がどんどん溢れて止まらなかった。そして、深々と頭を下げて、お客様をお見送りした。
「ありがとうございました!」
なんだか、一皮剥けたような気がしていた。
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