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「へいらっしゃい!」
真っ白い割烹着を着た男達の、威勢のよい声が飛び交う。ここは、老舗の寿司屋。
僕は先日、ようやく親方から寿司をにぎることを許された、新米の寿司職人。兄さん達の足を引っ張らないよう、そして何より、こんな僕を認めてくれた親方の期待を裏切らないよう、今日も僕は寿司をにぎる。
時は日曜の昼下がり。なので、店は大賑わいだ。白身魚にトロ、イカにタコ、海老に穴子と、一心不乱にネタをにぎり続ける僕は、マシーンのようだった。
とそこへ、見慣れない客が、僕の前のカウンター席を陣取った。中年の男性客で、テンガロンハットにサングラスといったウエスタンスタイル。寿司屋に来るには、ちょっと場違いな風貌で、出されたお茶にも手をつけず、じっと僕の手捌きを見ているようだった。
「兄ちゃん、新人だね?」
男性客の第一声である。僕の動きを分析していたのだろうか。少し動揺した。
「はい。で、何をにぎりましょう?」
僕も笑顔で切り返す。得体の知れない男だったが、客には違いない。客である以上、それなりの“もてなし”というものをしなければ、寿司職人として失格なのだから。
「そうだな。じゃあ、これをにぎってもらおうか」
そう言うとその客は、突然カウンターの上に飛び乗り、仁王立ちとなって、ジーンズとパンツを一気にずり下ろした。
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