バカ正直

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 小一時間ほど走ると、田畑に囲まれた田舎道に出た。 「もうすぐ実家だから」という彼の言葉が、私の緊張をさらに加速させていた。 「……ねえ」 「ん、なに?」 「私、正直に話すね」  彼は、私の言葉に笑顔で返事をした。実は私はバツイチで、先日、離婚したばかりだ。しかも、彼より一回りも年上。そんな女を紹介されて、ご両親が喜ぶはずもない。しかし、私には正直に話して誠意を見せるしか手段がなかった。 「俺も正直に話すよ」  彼は、そう言って私の頭をやんわりと撫でた。うん、私って超幸せかもしれない。  彼の実家が見えてきた。なんてことない田舎の一軒家。玄関先には、彼のご両親が、笑顔で手を振って出迎えてくれてるのが見て取れた。 「もう、後には引けない」そう思った。  私達は居間に通された。木目が鮮やかな茶褐色のテーブルの前に座る。目の前には、彼のお父様が鎮座し、私を観察していた。 「こんな田舎までようこそ。疲れたでしょう」  そう言いながらお茶を差し出すお母様を見て、私は腹を決めた。最初は他愛もない話から、徐々にではあったが、自分の身の上を打ち明けたのであった。  すると意外にも、ご両親は嫌な顔ひとつも見せずに、こんな私を受け入れてくれたのだ。  私は正直に話して良かったと、ほっと胸を撫で下ろしていた。  そして「で、二人はどうやって知り合ったの?」というお母様の問いに、彼もまた正直に答えた。 「エキサイト不倫ドットコムっていうサイトだよ」  そこは嘘でいいだろ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加