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小一時間ほど走ると、田畑に囲まれた田舎道に出た。
「もうすぐ実家だから」という彼の言葉が、私の緊張をさらに加速させていた。
「……ねえ」
「ん、なに?」
「私、正直に話すね」
彼は、私の言葉に笑顔で返事をした。実は私はバツイチで、先日、離婚したばかりだ。しかも、彼より一回りも年上。そんな女を紹介されて、ご両親が喜ぶはずもない。しかし、私には正直に話して誠意を見せるしか手段がなかった。
「俺も正直に話すよ」
彼は、そう言って私の頭をやんわりと撫でた。うん、私って超幸せかもしれない。
彼の実家が見えてきた。なんてことない田舎の一軒家。玄関先には、彼のご両親が、笑顔で手を振って出迎えてくれてるのが見て取れた。
「もう、後には引けない」そう思った。
私達は居間に通された。木目が鮮やかな茶褐色のテーブルの前に座る。目の前には、彼のお父様が鎮座し、私を観察していた。
「こんな田舎までようこそ。疲れたでしょう」
そう言いながらお茶を差し出すお母様を見て、私は腹を決めた。最初は他愛もない話から、徐々にではあったが、自分の身の上を打ち明けたのであった。
すると意外にも、ご両親は嫌な顔ひとつも見せずに、こんな私を受け入れてくれたのだ。
私は正直に話して良かったと、ほっと胸を撫で下ろしていた。
そして「で、二人はどうやって知り合ったの?」というお母様の問いに、彼もまた正直に答えた。
「エキサイト不倫ドットコムっていうサイトだよ」
そこは嘘でいいだろ。
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