火星人

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 火星の地下都市の生活は、思ったよりも快適のようだった。火星に移住した人々の喜びの声を受け、火星にまた新たな地下都市が次々と建造され、地球から続々と人が詰めかけるようになった。  やがて、火星でも文明が発達し、地球からの援助がなくとも、生活に困らなくなっていた。  それから、さらに数百年が経過し、火星に住む人々の身体にも変化が出はじめた。  火星の重力は地球の約三分の一。なので、身体を支える骨格というのが退化してしまい、まるで軟体動物のようになってしまっていた。さらに、日光にさらされないので、体色は、血管が容易に確認できるほど白く透き通り、体毛が一切生えなくなってしまっていた。  しかし、その変わり果てた姿も、火星での生活には適していたので、何の問題もなかった。  丁度その頃、地球へ巨大隕石が衝突していた。結果、地球の文明、および生命体は完全に絶滅してしまい、存在するのは、荒れ果てた土地と、見渡す限りの海のみ。文明が栄えていた痕跡は微塵も残されてはいなかった。  そう、地球は一から、またその文明を築かねばならなくなったのだ。  やがて、陸には植物が生え、海には微生物が誕生した。そして、それらが進化を遂げ陸に上がり、恐竜が誕生する。それから氷河期を迎え、恐竜も絶滅し、また再び人間という生物が誕生するまで、数十億年はかかるだろう。  そして、再び文明が発達し、地球人が宇宙へと目を向けた時、彼等は人類の子孫である人々を、火星人と呼ぶのかもしれない。
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