かくて記憶ハッカーは戦えり

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(ジャスト2時、作戦決行だ!)  その瞬間、ビルの壁面に僕の顔がアップで映しだされた。  会場の観衆がざわつく。  そのドサクサに紛れて、1人の男が壇上目がけて走った。 「コッチを見ろ!」  スマホのマイクに叫ぶと、それが壁面の映像とともに大きく流れた。  プロジェクションマッピング──建物や物体などに対して、ビデオプロジェクターを用いて映像を投影する技術である。  アオネ先輩に協力を頼んだのは、このプロジェクションマッピングの仕掛けだった。  僕の映像を投射して、会場中の視線を集めるためである。  映像に流れた声で、壇上に走る男が振り向いた。 (視線を捉えた──ハッキング開始!)  男の瞳孔から侵入して、張り巡らされた記憶障壁を打ち破る。  暗殺する記憶を書き換えて、記憶ハッキングの成功である。  糸が切れた人形のように男が倒れるが、安芸総理とT大統領の周りをSPが囲む。  ところが──次の男が立ち上がり、SPが囲む要人2人に迫った。 「コッチを見ろ!」  僕は壇上に走りながら叫んだ。  また、男の記憶をハッキングして阻止する。男が転がりながら倒れた。  これは記憶トラップだ。  プログラム実行中に何らかの異常が発生した場合、あらかじめ定められた処理作業へ自動的に移行する記憶プログラムだ。  また別の男が立ち上がり、壇上に向けて走る。 「コッチを見ろッ!!」  大声を張りあげて駆ける。  今度は男が振り向かない。 「うああああぁぁぁッ──!!」  スマホを振り上げて絶叫しながら、やっと男を振り向かせた。  僕は鼻血を垂らしながら、それでも果敢にハッキングを試みる。
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