かくて記憶ハッカーは戦えり

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(連続で潜ったツケで、脳細胞が沸騰しそうだッ)  記憶領域を焼きつかせて、バタリと男が昏倒した。 「やった……」  大きな達成感に包まれて歓喜が沸き上がった。  それでも連続でハッキングした代償を大きく、脳内でバチバチと意識端子がショートする幻聴が聴こえる。  ダァンッ!!  会場中に銃声が轟いた。  SPの一人が持つ拳銃から、ゆらりと硝煙が立ち昇っている。 「……あれ……」  僕は壇上の手前で倒れた。  焼けた鉄棒が刺さったように感じて胸に手を当てると、ぬらりと赤い血が指を濡らした。 「自分が撃ったのか……!?」  発砲したSPが茫然とつぶやく。自分でも意識していない行動に戸惑いの表情を隠せないでいた。 「退きなさい」と、安芸総理が僕の前で膝をついた。 「……なっ……」 「君は視線を合わせることでハッキングするのか?」  安芸総理が口端を吊り上げて訊ねた。 「お前は……?」 「私は手で触れて、他人の記憶を操作する能力だよ」 「この……クラッカー野郎め……」  僕は電車のテレビで総理の眼を見た瞬間に、この暗殺計画を察知した。  でも、まさか発砲してくるとは思わなかった。平凡な僕には予想だにしなかった事態である。 「世間知らずの戯れ言だな。これは天から授かったギフトなのだよ。 それを政治に利用して、なにが悪いと言うのか。この腐った国は、私のような強力な指導者が必要なのだ」 「それで……T大統領を暗殺しようと……?」 「C国のテロによって大統領が暗殺される。この日本を軽視する大統領を排除して、日本の同盟国としての必要性も増す。 まさに一石二鳥の計画だったのにな」 「……ざまあみろ……」  僕は精一杯の悪態をついた。
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