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神殿の中は割と綺麗だった。
沢山の柱が左右対称に綺麗に並び所々に天使の形をした石像が建てられていた。
(おかしいな……こういう神殿は古くからあるから、もっとあちこち壊れててもいいのに……)
俺は綺麗な事に違和感を感じながら、隣を黙々と歩く上村さんを盗み見た。
(気まずい……ひたすら気まずい……どんな話題を振ったらいいか全く分からん)
気まずさを抱えながら歩いていると、隣を歩く上村さんが歩みを止めて一つの扉の入り口の前で止まった。
「どうしたんだ上村さん?」
不思議に思い上村さんに問いかけてみた。
「……魔獣の気配が一匹、中に居ます」
上村さんは扉の入口から目を離さないまま答えた。
(……確かになんかの気配がするな……でもかなり意識しないと分からないぐらいの気配だ)
そう思いながら上村さんに話かけてみた。
「上村さん一ついいか?」
「……手短にお願いします」
「分かった……いつもこんなに周りに意識を向けてるのか?」
「……いえ。私は意識しなくても視えますから……」
「視えるって?」
「……それは、」
上村さんが何かを言おうとした瞬間、上村さんが『何か』に反応した
「……来ます」
上村さんがそう言った直後、その『何か』が姿を見せた。
「っ!」
凄い殺気が飛んできたのでその場から移動すると、さっきまで居た場所が『何か』によって抉られていた。
「我の睡眠を邪魔したのは貴様だな?」
その『何か』の姿を見た瞬間、驚愕せざるを得なかった。
「S級魔獣『ビースト・デーモン』か!」
そう、その『何か』の正体は魔獣の中でも高位ランクの魔獣だった。
「もう一度問う……我の睡眠を邪魔したのは貴様だな?」
(正直言ってマズい………俺一人だけならまだしも、上村さんが居る状態で巻き込まないように戦うのは不可能に近い!)
そう考えていると、俺の前に人影が映った瞬間その人……上村さんが力ある詩を紡いだ。
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