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「我に立ち塞がる者に裁きを与えよ『ホーリー・ライト』」
上村さんが力ある詩を紡いだ瞬間、目の前が真っ白になり、魔獣が跡形もなく消えていた。
「……終わったようですね。さぁ、帰りましょう」
上村さんは何事も無かったように去ろうとした。
「っ!上村さんっ!」
上村さんが去ろうと後ろを向いた瞬間、かなりの量の殺気を感じて上村さんを抱き寄せた。
背中に鋭い痛みが走り意識が飛びそうになった。
「そんなものか小娘……」
意識を保ちながら声がした方に顔を向けると魔獣が無傷のまま立っていた。
「……ウソ……何で?確かに消滅させたハズなのに……」
上村さんは何が起こったのか分からないまま、放心状態に陥っていた。
「小娘……何であの程度の攻撃で我が消滅したと思った?」
魔獣も何であの攻撃で消滅した事にされているのか不思議そうに尋ねてきた。
(いやっ、確かに1回気配が消滅した筈だ……それにあの魔法は確か聖属性の中でも高位のハズ……)
俺も何で1回気配が消滅したハズの魔獣が目の前に、それも無傷で居るのか不思議だった。
「我は高位の存在……故にあの程度の攻撃は簡単に弾けるぞ」
魔獣は余裕そうにゆっくり近付いてきた。
(マズいな……上村さんだけでも逃がしたいけど、この様子じゃ無理そうだな……)
そう思いながら上村さんの方を見ると、まだ信じられないのか放心状態のままだった。
(俺も少し血を流し過ぎたし、時間稼ぎすらギリギリだ……本当は誰かの前で使いたくなかったが使わざるを得ないか……)
そう思い、一応持って来てた自分の腰に携えている愛刀に手をかけた。
「貴様達は下等の分際で我の睡眠を邪魔した……故に消してやる」
そう言って魔獣が手をかざした瞬間、魔獣の手が消えた……否、他でもない朝風吹雪が刀を振った構えで立っていた 。
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