プロローグ

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「行こー。水野くーん」  と、右腕に絡まりついているのは髪の毛を甘栗色に染め睫毛をバサバサさせた、少し派手めだけれど綺麗な女子生徒。  ジミノを引っ張って歩いて行く瞬間、すれ違いざまにソロッと視線だけを上げると切れ長の瞳が私を見つめていた。  変わらず私の瞳を真っ直ぐに見つめてくれる瞳に、ドキリとするけれどすぐに逸らされた視線に私は胸元のシャツをギュッと握る。  無視されて当たり前。  いや、そもそも最初に視線を逸らしたのは私だ。  何故か先生とは普通に接することができるのに、ジミノとは無理みたい。 「……美穂」  階段の下から、すれ違うジミノと立ち止まったままの私を交互に見つめるユカが複雑そうな顔をする。  ずっとジミノの情報は遮断していたから、さっき一緒にいた女の子が誰かなんて私は知らない。  もしかしたら彼女かもしれないし、もしかしたら遊び相手かもしれない。  どちらにせよ、私には関係のないことだ。
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