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「カエルの歌が聞こえてくるよ」
そう口ずさみながら家を出た冬の朝──。
何となく浮かんだメロディーを口ずさんだだけ。だって、あたしはカエルが嫌いなんだもの。
ふとアスファルトの道路を見ると、カエルが車にひかれていた。
でも、あたしは可哀相だとは思わない。だってカエルだもの。
なんの価値もない生き物。そういえば、皮をむいて焼けば美味しいっておじいちゃんが言ってた。
でも、あたしは食べようとは思わない。だってカエルだもの。
小さな頃は、よくカエルの口に爆竹を突っ込んで遊んでたな。
爆竹に火をつけて、空に投げる。高く舞い上がったカエルが、パーンと木っ端みじんに砕け散るのを見て、近所の花火大会よりも興奮したのを思い出した。
でも、そんなことも、今となってはしなくなった。あたしも大人になったということか。
あたしはカエルの亡きがらをじっと見た。何度も車に踏み潰されたカエル。その姿は、もはや両生類──。
そう、生物としての面影はなく、ペラペラのせんべいのようだった。
べったりとアスファルトにこびりつき、時折吹いてくる風に、足のような物がたなびいていた。
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