母さんのインターネット

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 それからというもの、母さんはパソコンの虜となった。  僕が仕事から帰っても、パソコンにかじりついたままで、一歩も動こうとしない。わからなくなるとケータイの時と同じように僕を呼び、眉間にシワを寄せる。  僕はそんな母さんを、ちょっと可愛いなんて思っていた。  それからしばらく経ち、母さんも僕の助け無しでパソコン操作ができるようになった。  ちょっと淋しい気もするが、母さんは楽しそうだし、それでいいと思っていた。  母さんにパソコンを取られてから、僕のインターネットはケータイに移行していた。  でも、ケータイだからといっても不備はない。ちゃんとチャットも出来るし、ブログだって書ける。  僕は久しぶりに、ブログでも書こうと、入会しているSNSへログインした。 すると、 「ねえ、ちょっときて」  と、母さんが呼ぶ声が聞こえてきた。 「また何かトラブルか?」  と思い、僕が嬉しそうに母さんの所へ駆け寄ると、母さんはパソコンの画面を指差し僕にこう言った。 「こいつムカつくんだけど」  画面を見ると、僕が入会しているSNSで母さんが「荒らし」をやっていた。  僕は母さんに、 「本当だ、母さんやっちゃいなよ」  とだけ言い、そのSNSを退会する決意を固めていた。  だって僕は、母さんに頭があがらないのだから。
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