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僕はパルコの前でそわそわしていた。なぜなら、今から出会い系サイトで知り合った女性と会うからだ。
そして僕は、三つの意味でドキドキしていた。
一つ目は、その女性とは初対面であること。僕より十歳下のコンパニオンだ。
二つ目は、僕がその女性に嘘をついていること。自分の年齢を十歳も若く言い、さらに送った写メは部下の谷口くんのものだ。そして名前を和也と偽り、独身だと言ってしまっていた。
三つ目は、妻にも嘘をついたこと。会社は休みのくせに「休日出勤で何時に帰るかわからない」などと言い、僕の鼓動は今までにないほどの速度を記録していた。
僕は、日曜の昼間に似つかわしくないスーツの袖を捲り腕時計を見る。
そろそろ彼女がくる頃だと思ったその時、パルコの前でうろうろと誰かを探している様子の女性を発見。
写メは貰ってなかったが、僕は彼女だと直感し、その女性に近付いた。
すらりとした体つきにピンク色のコートを羽織り、長い茶褐色の髪が風になびいていた。僕は少し距離をとり、背後から声を掛ける。
「あの、和也です」
だが、彼女が振り向いた瞬間、僕の背筋は凍り付いた。
「……妻だ」心でそう叫んだ。
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