パンティを追いかけて

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 陽も傾きかけた下校時──。  小学六年生のたけしくんの眼差しは、二階建てアパートのベランダに干されている、黒いTバックのパンティにくぎづけになっていた。  神秘ヴェールに包まれた、思春期という名の秘密の花園に足を踏み入れたばかりのたけしくんには、あの紐のような物が女性用の下着だと認識するのに、少々時間を要した。  だが、パンティだとわかった瞬間、たけしくんの胸は高鳴った。  夕暮れ時の穏やかな風にたなびく紐パンティ。それはまるで、たけしくんを誘うかのように、ヒラヒラと揺れていた。  とその時、一陣の風が吹いたかと思えば、たけしくんの目の前で、パンティがあっという間に風にさらわれてしまった。  そう、洗濯バサミの挟み方が甘かったのである。  たけしくんは空を見上げパンティの行方を探した。そして、大空にふわふわと舞うパンティを発見したかと思えば、そのまま勢いよくパンティを追いかけ始めたのである。  なぜだかわからない。しかし、たけしくんは、じっとしていられなかった。そして、たけしくんの視線は、パンティという名の黒いアゲハ蝶を完全にロックオンしていたのだ。
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