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夜になり、裕介に俺達三人が通った学校へと呼び出された。一歩足を踏み入れると、あの頃の懐かしい記憶が蘇る。
「よお」
との突然の声に振り向くと、そこには裕介がいた。相変わらずの人懐っこい笑顔に、少し安堵した。美佳の件で怒っていると思っていたからだ。
俺もあの頃に戻った気分で、
「久しぶりだな」
と笑顔を向けた。
後は、美佳が来れば三人揃う。そう思った矢先に、裕介は俺の胸を貫く台詞を吐いてしまう。
「お前、美佳とデキてんだってな」
笑顔が引きつり、体が一瞬で凍り付いた。やっぱり裕介は俺と美佳の関係に気付いていた。
「美佳から聞いたよ。なにも隠すことないだろ」
だが裕介は、とぼけた返事しか出来ない俺に、怒った様子もなく、そう言って笑っていた。そんな裕介を見た俺の目頭は次第に熱を帯び、込み上げる感情は、いつしか涙に変わっていた。
「泣くなよ、バーカ」
「う、うるせえよ」
やはり、裕介は幼なじみだ。抜け駆けした俺を罵倒するどころか、優しく迎え入れてくれたのだ。俺達は一生、親友でいられると思った。
「そういや、美佳は?」
「連れてきてやるから待ってろ」
そう言うと裕介は、校舎の中へと消えて行った。おそらく美佳は、俺達の話が終わるのを中で待っているのだろう。
しばらくすると、裕介が携帯に電話をしてきた。
「美佳が恥ずかしがってるから、教室まで来い」
とのこと。俺は校舎に入り、俺達が過ごした教室の扉を開いた。
すると突然、背中に激痛が走り俺はその場に倒れ込んだ。見上げると、血塗られたナイフを持った裕介が、にやけた顔で立っていた。
「美佳とあっちで仲良くな」
そう言いながら、裕介はナイフを振り下ろした。
俺の目に最後に映ったものは、教室で横たわる、血みどろの美佳の屍だった。
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