物の気持ち

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 数ヶ月前から僕は、物の気持ちというのが分かるようになった。 「物を大切にしなさい」という、お婆ちゃんの言い付けを守り、幼い頃から物を大切にしてきた。だからかどうかは知らないが、僕には物の心の叫び声というのが聞こえる。  テレビを観ていて、 「背中が熱いよ」  と聞こえたので、後側を触ると確かに熱かった。だから電源を切り休ませてあげた。  公園でブランコに乗ると、 「ちょっと重いんだけど」  と聞こえたので、ダイエットに励んだ。  電車の吊り革につかまると、 「汗ばんでて気持ち悪い」  と聞こえたので、ハンカチを挟んだ。  物の声を聞くことで、あらゆることに気付き、物の気持ちを理解することで生活も改善され、僕の人生は上手くいくに違いない。そう思っていた。
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