0人が本棚に入れています
本棚に追加
数ヶ月前から僕は、物の気持ちというのが分かるようになった。
「物を大切にしなさい」という、お婆ちゃんの言い付けを守り、幼い頃から物を大切にしてきた。だからかどうかは知らないが、僕には物の心の叫び声というのが聞こえる。
テレビを観ていて、
「背中が熱いよ」
と聞こえたので、後側を触ると確かに熱かった。だから電源を切り休ませてあげた。
公園でブランコに乗ると、
「ちょっと重いんだけど」
と聞こえたので、ダイエットに励んだ。
電車の吊り革につかまると、
「汗ばんでて気持ち悪い」
と聞こえたので、ハンカチを挟んだ。
物の声を聞くことで、あらゆることに気付き、物の気持ちを理解することで生活も改善され、僕の人生は上手くいくに違いない。そう思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!