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だが犯人は、客に向かって一斉乱射を始めた。客は次々と血を噴いて倒れ、ガラスの割れる音が耳をつんざき、まさに地獄絵図と呼ぶに相応しい光景が、目に飛び込んできた。女は悲鳴を上げ、男は絶句したまま身動きがとれない。
次に犯人は、私たち銀行員へと銃を向け、
「金を出せ」
と、要求した。
店長は慌てふためき、金を紙袋へと入れた。金額にして一億くらいはありそうだ。
そして、犯人は金を受け取ると、
「ありがとよ」
と呟き、また銃を乱射した。
私の周りで、次々と同僚達が倒れて行き、私以外の全員が死んだ。
すると犯人は、私に紙袋を持てと指示した。おそらく私を人質にして逃げるつもりだろう。そして、私は最後に殺されるんだ。
神様ごめんなさい。
平凡な毎日で幸せです。
楽しくない人生万歳!
だから死にたくないです。
だが犯人は、逃げもせずに、銀行の屋上へと私を連れて行った。下を見ると、数え切れない程のパトカーと警官隊で囲まれていた。
犯人は、私を楯にしたまま、金をばらまけと指示した。私が恐る恐ると金をわしづかみにし、おもいっきり屋上からばらまくと、警官隊の後方にいたやじ馬が騒ぎ出し、非常線を乗り越えて押し寄せ、パニックになっていた。
私は、また金をばらまいた。犯人が笑いながら、
「楽しいだろ?」
と言ったので、黙って頷いた。
正直、楽しかった。私が世界を動かしている。そんな気がした。
とその時、ターンという音が空に轟いたかと思えば、私の顔に血が滴り落ちてきた。
犯人はそのまま血を流し倒れ、私は悲鳴を上げながら、残った金をポケットに詰め込んでいた。
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