0人が本棚に入れています
本棚に追加
それからのことは、よく覚えていない。
ただ、俺が今背負っているのは、豚肉の塊、およそ七十キログラムということだけは、紛れも無い事実である。
それにしても重い。なんて重さだ。こんな事なら妥協せずに、頑張って子猫ちゃんに声を掛ければ良かった。
俺は後悔の念に駆られながらも、一歩一歩、山の奥地へと足を進めた。
人が入り込まないであろう場所に着くと、俺は穴を掘り始めた。そして穴が、子豚一頭入るくらいの大きさに達したところで、俺は子豚ちゃんを埋葬した。
非常に疲れる作業だったが、もう荷物を背負わなくていい開放感と、確実に任務を遂行した達成感に満たされ、俺は鼻歌まじりに、軽快なステップで下山をした。
それから、数年の月日が流れた。
俺は罪に問われる事もなく、悠々自適な生活を送っている。そして今度、結婚をする事にもなった。もちろん相手は、小柄な子猫ちゃんである。やはり女は、持ち運びが便利なのに限る。
だが後に、この子猫ちゃんが、大柄なイボイノシシちゃんに豹変することを、俺はまだ知らない。
最初のコメントを投稿しよう!