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“Dark Sunflowers”
真っ黒い、それはけど、太陽のような花だ。こんな、混沌とした、あいまいな形でふくらんでいく大量の雲の群れに覆われた、薄暗いこの世界にほんの一瞬でも存在することができるなんて。
そう、それはまるで「ダークマター」──暗黒物質に似ている。
ダイレクトに観測することはできない、科学的にまだ証明されていない、完璧にけど確実に銀河や銀河団内に、銀河団の間に大量にあるという未知の物質。宇宙空間のおよそ90%を占め、その重力により多分にたしかに実在すると、計算され予測されている未解明の物質。
さっきまで、ついさっき雨が降りだすまで、そこにはいっさい存在しなかったのに。
くだらない。
まさか、花が咲くなんて。暗く、光る、黒く縁どられ、くっきりとあざやかな、花がひらくのを、突如として眼前にすることになるなんて、まったく想像も予測もしていなかった。
暗黒の、太陽の、花──か。
くだらない、なんてくだらないんだ。『ダークサンフラワー』なんて思いつき、ネーミング、ほんとうにバカげている。
ああ。そうか、これは私的で詩的なEイコールmc二乗、一般相対性理論なのかもしれない。
光、時空、重力、エネルギー、観測者、情報、抽象化、形式化、脳神経、人類、進化、ネット、膜世界、そして──原爆。
そういうことか。〈太陽の塔〉が視界に入った瞬間、ふいに気がついた。
そういうことだったのか。やっと〈太陽の塔〉が何か、〈太陽の塔〉がどういう発想でつくられたのか、いま、わかった気がした──。
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