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そして、ついにサヤちゃんが俺の声を好きだと言ってくれた。
今までの努力が報われた瞬間だ。
俺は心の中で特大ガッツポーズをとりながらも、
「だってぇ……。まやぁ……だいすきぃ」
という、脳みそがトロけ出してしまってるんじゃないか?ってくらい甘いサヤちゃんの声にメロメロになってしまった。
俺の唯一の取り柄である声も、やっぱりサヤちゃんの天賦の才には敵わない。
俺への気持ちを解放してくれたサヤちゃんの口からは、さらに信じられない言葉が次々と飛び出してきた。
「オレは、真矢のモノだよ。真矢の好きにされたい」
そう言われた瞬間、頭が沸騰して『萌え死んでしまうかもしれない』……と本気で思った。
さらに、事後の甘い甘い疲れの中、俺のことがカッコ良く見えるだとか、キスが上手いとか、男が初めてなのに気持ちよくなってしまったんだとか……。
交わりの記憶は曖昧でも、サヤちゃんのピロートークは強烈に記憶に焼き付いた。
今まで誰かにこんなに好意を向けられたことなんか無い。
トロトロなサヤちゃんの表情を見ると、ウソを言ってるわけじゃないだろう……と、思う反面、雰囲気に流されて言ってるだけなんじゃ……と、疑う自分もいる。けど、もしそれが雰囲気に流されしてしまったお調子発言だったとしても、その場限りの言葉にさせるわけにはいかない。
雰囲気に流されたのなら、同じように甘い空気を何度だって作り出す。
そうすれば、それは本当のことになるはずだ。
そして、それよりさらに、驚きだったのは……。
「もう真矢とつき合ってると思ってた!」
って。
……………なんでだ?
俺としては『まずは再度告白、そして恋人になって欲しいと伝えて、いつかサヤちゃんと』……と、長期計画で考えてたのに。
ほんとうに、いつの間に?
振り返ってみても、いつのタイミングで恋人ってことになったのかよくわからない。
家に行く前日に、学校の屋上前の踊り場でキスした時は、確かにちょっと恋人っぽかった。
あのときもうすでにサヤちゃんの中では、恋人になっていたのかもしれない。
サヤちゃんは自分でも何を言っているのかわかってない時があるようで、俺には言動を予見するのが難しい。
だから、細かく追求すると、サヤちゃんなりの俺にはよくわからない理由で、『やっぱり違った』などと言い出すことにもなりかねない。
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