■2-そして[知るということ]

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そして美奈姉さんの友人である制作の人が、変わった声でもないのに印象的だからと、応募してきた初心者を採用したのだと教えてくれた。 初心者で、変わった声でもないのに印象に残る。 これが天賦の才というものなんだろうか。 真面目キャラのキャストはこなれた感じで、俺は聴いていて少しライバル心のようなものが起こるのを感じた。 けど、この癒し系キャラは、ただただ好ましかった。 やっぱり初心者だからかいろいろ気になるとこもある。それでも魅了されていた。 キャスト名を確認すると『SAYA』と書いてあった。 制作のふーにゃんさん情報だと、『SAYA』が参加している作品は、まだこれしか世に出ていないらしい。 けれど、他からももうすぐ参加作品が出る予定だと教えてくれた。 美奈姉さんにメッセージで 『SAYAが参加している作品が出たら教えて欲しい』 そうお願いした。 すると、 『すっかりSAYAちゃんのファンね』 と返事が来た。 ファン……。 そうか。 これがファン心理ってやつなのか。 その後、俺は『SAYA』の声聞きたさに、乙女ゲームを初めて自分でクリアした。 普段は兄さんにつき合って格ゲーやレース系のゲームをちょこっとするくらいなので、延々とシナリオを読まなきゃいけないゲームスタイルに苦労した。 けれど、ゲームと思わず小説を読んでいるつもりで挑んで、ようやくスムーズに進めるようになった。 『SAYA』がやっている、癒し系キャラの『サイラス』は、主人公の少女を守ることによって存在意義を確認しなければ自分を保てなくなりそうだ……という仄暗さも兼ね備えた役だ。 「いつだって貴女のそばにいて、どんなことからも貴女を守ります」 そう語りかけるサイラスを、俺が守ってやりたい。 そんな気分になった。 けど、ゲームを進めていくうちに、何かが脳裏をチラつく。 それが、どうにもカタチにならないもどかしさをずっと感じていた。 そして、物悲しいバッドエンド2を見たとき、まるでなくしていたパズルのピースがスコンとはまったかのように、俺の脳裏に顔が浮かんだ。 ……有家川??? あ? サイラスは有家川に似てるのか? 何となく納得がいった。 けど、まだスッキリしない。 そもそも有家川は癒し系じゃない。 似てるのは二面性があって、守ってやりたくなるってことくらいだ。 なんで似てると思うのか……。 あらためてキャストの名前をじっくりと見た。
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