時間の女神

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「であるからして~、今日の晴れの日を~迎えられた~わけであります~」 この結婚式用に誂えた、可愛らしいピンクのドレスを纏っている身にはあるまじき行為であろうか――と思いつつ、里恵はバレバレの大あくびをこらえきれなかった。 周りに見えないように気を遣いはしたんだけど。 同じテーブルに着いた非正規社員仲間の女性達がつついてくる。 普段交互にシフトを組んでいるため、全員が顔を合わせるのは珍しい。 だから「あたしも眠い」「早くお料理食べたいよね」と目配せだけで結構盛り上がる。 通常、この課長の「一言」の挨拶は30分は下らない。 何度時計を見ても、時刻はほとんど進んでいない。 ――実は既に1時間も2時間も経っているんじゃないか。 ようやく解放されて、料理を頬張り、演し物を楽しみ、仲良しの花嫁と写真を撮り……そして引き出物を手にするまでは、あっという間だった。 「もうそんな時間?」 また時計を見る。 あのクソ退屈な挨拶は長々しかったのに、その後の楽しくて華やいだ時間は一瞬だった。 ――実は1分くらいしか経っていないんじゃないか。 「里恵、……ケガはもう大丈夫?」 遠慮がちに1人が訊いてきた。 ニッコリうなずく。 「これ、ウィッグだよ。わかる?」ときれいに編んだ髪を指す。 彼女らはみな、え~、と驚きの声を上げた。 「白髪、伸びてきたら根元は黒いから。あとしばらくの辛抱」 へえ、と別の1人が訊く。 「怖いと白髪になるってホントなんだ?」
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