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───酷いもんだ。
この町一番の大通りは、赤黒い血で染め上げられていた。
鉄とガソリンを一斉にぶちまけたかのような、鼻にまとわり付くなまぐさいにおいが辺りに充満している。
道脇に建ち並ぶ見慣れなた店も、家も、その多くが真っ赤な炎で燃え上がり、熱気が唸りを上げている。
そこに、一人の青年が立ち尽くしていた。
何度も辺りを見渡し、何かを探すかのように通りを駆けずり回る。
頭の切り傷からは、ドロドロと生暖かい血が滴り落ち、左目の視界を遮った。
それを服の袖口で拭い、身体中のケガの傷みに歯を食い縛る。
いよいよ意識が飛びそうだ。
だが、今倒れるわけにはいかない─
そう自分に言い聞かせようとするが、それを嘲笑うかのように、炎による熱気が執拗に喉をかきむしる。
「来たな─」
鉄の味がする喉から、何かを吹っ切ったように血泡を吐き出す。
そしてゆっくりと顔を上げた。
視線の先─
ガチャガチャと音を立てる、重厚な金属でできた艶消しの銀色甲冑。
ソイツは燃え盛る炎に照らされ、鈍く光る。
身の丈はおよそ180センチほどか。
特徴的な赤い皮膚は、筋肉をグロテスクに詰め込み、荒々しい張りを見せている。
粗悪で不恰好な兜を頭にかぶり、その下には黄色い眼がこちらを睨む。
残虐さと傲慢さを表したような、その人ならざる醜い顔は、これまでに命を奪ったであろう人々の鮮血がこびりついていた。
大型バイクよりも一回りは大きい虎の様な猛獣に股がり、肩に血塗れの大剣を悠々と担ぎ上げている。
見たところ2騎か。
計4匹。
1匹に一発ずつ撃ち込んで倒せるんなら良いんだがな。
「やるしかない。」
そうボヤくと、右手で握り締めた5発のライフル弾に視線を落とす。
血で滲んだ手の平の中で、ギュッと握り締める。
今持ってる弾は、この5発のスピッツァー型弾頭弾のみ。
約8×57mmのリムレスカートリッジで、鉛の弾丸を真鍮で槍状に包み込んでいる。
いわゆるフルメタルジャケット弾である。
名前の通り、弾丸となる重く柔らかい鉛を、貫通力を持たせるために固い真鍮メタルで覆っている。
コイツであれば、あの厚い鎧をぶち抜ける筈だ。
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