4人が本棚に入れています
本棚に追加
弾を5発横に並べる様に握り直すと、スリング(銃を運ぶためのベルト)で肩から下げていた小銃をを下ろし、左手に持つ。
ズシリと重いこのライフルこそ─
Kar98k.
モーゼルの傑作ボルトアクション。
それが、元いた世界でこの銃が呼ばれていた名前だ。
木製の黒みがかった銃床(銃の裏)とストック(構えた時に肩に固定する部位)は、薄くブルーに輝く黒鉄の機関部とバレル(銃弾の通る筒)をガッチリと包み込む。
右下側へ乗り出した、絶妙に降り曲がったボルトハンドル(銃弾を装填する際に稼働させるレバー)は、撃ち手の操作を狂わせることはない。
この恐ろしい程に洗練された完成度は、まさに至高のボルトアクションライフルと言っても過言ではないだろう。
だが、これはオリジナルではない。
荒々しく削り出した粗悪な部品は、正直少ないとは言えないのは事実。
獣が唸りを上げた。
50メートルは離れているであろう位置から、咆哮がビリビリと振動を伝える。
ゆっくりとこちらへ歩み始める醜悪な化け物どもは、今にもこちらへ猛進しようとしていた。
左手で支える銃床を少し後ろへ傾け、右手小指でボルトハンドルを引き上げる。
ボルト先端のエキストラクターが解除されたことにより、ボルトハンドルを手前へ引けば、薬室が開放される。
そして、流れるように銃床内のボックスに弾を一発ずつ突っ込んでいく。
ダブルカラム構造(弾がおよそ2列に装填される)のボックスに5発を装填し終えると、後は勢い良くボルトを前進させるのみ。
リム(弾の爪)がボルトのエキトラクターにガッチリとホールドされ、薬室に弾頭から装填される。
これで射撃準備は完了した。
あとは外さないことを祈るばかり─
最初のコメントを投稿しよう!