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「ッ───!!!!!」
来た!!!
強靭な脚で地面を蹴り上げ、虎の様な猛獣が唸りを上げながら突っ込んでくる。
何百キロあるだろうか。
甲冑を着た獣が、あの巨体の猛獣を軽々と操っている。
まさに獣同士が一体となっていると言えよう。
流れるように右脚の膝を地面に付き、左手で銃床、右手でグリップをガッチリと固定する。
オイルを塗りたくった木製のストックを頬に着け、パッドプレート(射撃時、肩を固定する部位)を肩にしっかりとあてがった。
ストックのスベスベでひんやりとした感覚。
興奮で熱くなっている頭を少しばかり冷してくれた気がした。
両目を見開き、右目をタンジェントサイト(照準器)と垂直に。
こればっかりは手を抜かずに仕上げて本当に良かった。
先頭の奴を照準の真ん中に据え、トリガーガードに人差指を置く。
距離およそ35メートル───
30────
25───
死ね。
トリガーを引き絞り、衝撃に身構える。
途端に銃口からオレンジ色のマズルフラッシュが炸裂し、パッドプレートから肩に、まるで殴られたかの様な衝撃波が伝わった。
ダァーンッ!!とライフル独特の発射音が耳をつんざき、振動を辺りへ響かせる。
その刹那、鉄鍋を鉄骨で押し砕いたような、ゴスッという鈍い金属同士の低い音も、同時に耳を捉えた。
モーゼルのロングバレルから狂いなく射出されたフルメタルジャケット弾は、初速700mを超える高速弾と化し、数センチはあるであろう獣の甲冑の胸部に難なく風穴をぶち抜いた。
弾はそのまま獣の身体の骨と内蔵を食い破り、背中から飛び出し、その役目を終える。
貫通力に重点を置いたフルメタルジャケット弾は、その特性ゆえに対象へ殺傷力は高いとは言えない。
だが───
今の初弾は確実に奴の心臓を貫いていた。
獣の狂気に猛り狂ったあの黄眼は既に上を剥いており、汚ならしい大きな口元からは、ダラリと舌が垂れ出ている。
途端に鮮血が口から盛大に吐き出され、小さな血飛沫と共に、けたたましい音を立てながら地面にその巨体をぶちまけた。
まさに即死である。
奴のしてきた事を思えば、あまりに不釣り合いな安楽死であるとも思えた。
しかし、今はこれしか倒す方法がない。
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