プロローグ

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撃ち殺された主人に振り返えろうともせず、主人のいない猛獣は脇目も降らず俺にまっしぐら。 鎧すら身に付けていないアレにはこの弾はあまり向かないのだが。 サッとボルトハンドルを引き絞り、エキトラクターで薬室から空薬莢を引っ張り出す。 上部のリムを押さえられただけの不安定な空薬莢は、弾かれた様に外へと投げ出される。 音も無く地面に着地する空薬莢を他所に、ボルトハンドルを前進させ、次弾を薬室へ送り込む。 そして迷い無くトリガーを引き絞る。 マズルフラッシュと衝撃波。 この感覚には、もうかなり慣れ親しんだ。 弾は真っ直ぐに猛獣の眉間を捉え、身体を一直線に貫いた。 滑り込むように崩れ落ちる猛獣。 そして、その猛獣の傍を猛烈に疾駆するもう一騎─ 仲間を一撃で葬られ、こちらの危険度を察したのか。 更に加速しているように見えた。 胸を隠すように前に屈み、大剣を上段から中段に構え直す。 学習してんのか─ 瞬時にボルト操作を終え、二つ目の空薬莢が足元に転がる。 既に距離にして20メートル─ 速射で二匹とも片付けるのにはかなりギリギリのラインだ。 一発でも外したら、終わる。 ゆえに、先に狙い撃ったのは猛獣の方だ。 1匹目同様、真っ直ぐこちらへ突っ込んでくるもんだから、この近距離であの猛獣の眉間を貫くことは容易い。 血柱を上げながら絶命し、地面に突っ込む猛獣。 それを操る甲冑をまといし獣は、当然ながらバランスを崩す。 計算通り。 一騎目は、距離の関係からして、上下に大きく揺れる猛獣より先に、騎乗してるやつから殺す必要があった。 動き回る眉間より、動きのすくない騎乗者の心臓を狙った方が良かったのだ。 たが、かなり接近してきた二騎目は、下の猛獣の眉間を狙える距離にあった。 猛獣を殺し、 あとは、バランスを崩して地面に突っ込んだ甲冑をまとった方の獣を撃ち殺せばいい──── そう考えていた。
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