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「なッ……!!?」
思わず口から声が漏れてしまう。
あの猛スピードで身体を地面に打ち付けられたというのに…!
甲冑の内側を血で染めながら大剣を振りかざし、もはや絶叫に近い咆哮を上げる。
頭を強く打ったのか。
血で見えていないであろう左目と、獲物を仕留めるまで止まらないというような圧力を孕む、奴らの特徴的な黄色い右目。
距離にして既に10メートル───
奴が本気で飛びかかってくるならば、こんな距離一瞬で詰められる。
獣は深く脚を踏み込み、大剣を身構えた。
いよいよ俺を殺そうとしているって訳だ。
しかし─
この間合いなら、俺の勝ちだ。
音速に近い初速の高速弾に、速さで勝てるわけがないがないだろうが。
獣は脚を蹴りだした。
────────!!!!?
トリガーを引く刹那、モーゼルのグリップを握る右手に力がこもる。
自分でも気づかぬ間に動揺した感情が悪影響を与えた。
俺の目は、奴の右腕に釘付けになる。
獣の赤く豪快で逞しい右腕は、大剣を俺に向かって思いっきりぶん投げてきた。
同時に、聞きなれた炸裂音と共に銃弾が放たれる。
しかし、動揺で力がグリップに加わり、バレルの先にいた筈の標的はそこにはいない。
瞬時に土煙が獣の側から上がり、無情にも銃弾は敵に当たることは無かったのだと理解した。
はっ…
なんだよ、この間の抜けた最期は。
大剣が脇を通りすぎ、後方で大きな音を立てながらその動きを止める。
しかし、迫りくる獣は止まらない──
もう間に合わない。
「終わった─。」
痛みでバーサーク状態となった獣は、勝ち誇ったように涎を撒き散らしながら笑い狂う。
そして、甲冑に据え付けられた二本目の剣が抜かれ、迷い無く俺に降り下ろされた。
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