一つ屋根の下

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そいつは香坂緋翠と名乗った。 有名大学の院生で、獣医学科で研究をしている秀才だ。 何やら家にいたくないらしく、俺のところで一緒に暮らすことになった。 最近の若者といった雰囲気のファッションに、綺麗で中性的な面立ち、すらりとした手足。実は俺身長越されたんだよな…なんかショックだ。 緋翠は料理がうまい。 毎日三食、お弁当まで作ってくれるため外食ばかりだったころに比べて体調もいいし、食費も浮いた。 愛妻弁当なんてよくからかわれるが見た目も味も抜群なのでむしろ自慢している。 なんというか、胃袋がっちりつかまれた。 一応家賃は俺もちだし気を使ってるのか、家事全般文句も言わず引き受けてくれている。 ちょっとくらいわがまま言ってくれたっていいのに… その意地らしいところがまた愛おしい。 何より笑顔がかわいくて、色っぽい。あんな笑顔で「おかえりなさい」とか…俺は幸せ者だとつくづく思う。
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