誰も知らないわたしの秘密。

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 何かに考えを巡らせている。 「行っても、その体調だから……」  前々から決まっていた予定。どこかの高そうなビルのレストランなのか、屋上なのか、とにかく家族全員でバイキングに行く予定だった。変った形をしたビルで──。  お腹が痛い。それが今一番、留守番組に残れる自然な理由だと思えた。 「それじゃあ、お留守番お願いね。ガスは使わないでね。お外に出る時は──、今日は家で大人しくしてなさい。お腹が痛いんだから」 「はい。ママ。ごめんね」  わたしの返答を聞くまもなく、お母さんはそのことを、お父さんに告げようと声をあげていた。 「パパーっ。この子は今日は──」  お母さんが事情を話しに、既に玄関で靴を履きかけていたお父さんの方へ歩いて行く。二、三言何やら言葉を交わし、時々二人してこっちを向いて、また顔を見合わせ話をしていた。  弟はもう外に出ていた。お姉ちゃんもお父さんの背中側を通り抜け、玄関から出て行くところだ。 「それじゃー。よろしくね~!」  お母さんがそう言って、「鍵、後で閉めといてねー」そして出かけて行った。  家にぽつんと一人残されたわたし。勉強のことでとやかく言われもしない。遊びであれこれ言われることもない。家のことで用事を言い付かることも無い。 「あぁ~楽~~~~」  思わず声に出して言ってみたくなった。  さぁこれから何をしようか?  なんて、もちろん、考えていることは一つ。それをドキドキさせて、家の中に誰も居ないのに、まだ上の階に行けないでいるわたし。お母さんの部屋に──。  まだ時間はたっぷりとある。  いつ以来だろう? 急に誰も居なくなったので、大袈裟に静かな空間のように感じる。カッチ、コッチと時計の針の音だけが聞こえる。シーンと静まり返って部屋に耳を澄ます。 「うん。誰も居ない──」  確認をするように口に出してそう言い、やはり待ちきれなかった──もうわたしは階段に足をかけている。一歩、一歩、誰も居ない筈なのに、罪悪感からか? それとも家族に知られると恥ずかしいという負い目からなのか、音を忍ばせ今、階段を登っている。  二階に着くと、右側の部屋がお母さんの寝室。
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