誰も知らないわたしの秘密。

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 わたしの顔がまた平常に戻った。真っ白な顔でニコッとしている。 (恥ずかしい。こんなことして……)  次に脂性ファンデーションを手に伸ばし塗る。  みんなが帰って来るのは夜だ。 「うん。長時間化粧崩れしない!」  何かのCMのようなことを口に出して、思わず笑ってしまう。  生まれつき、わたしはまつ毛が長い。お母さんは、小さい頃わたしが泣く度に、濡れて目立つまつ毛を眺めては「ほんっと、まつ毛長いわよねー」と泣いてるわたしをほったらかしにして感心していた。  そのまつ毛をビューラーで上げる。 「痛っ!」  上手くいかない。上瞼を挟んでしまう……。  わたしは上瞼を左手で上げ、まつ毛をほんの少し上に向かせて、また挟む。  ”ぎゅうぅぅぅ”  これで良いのかな?  鏡の中のわたしが、片目だけ雰囲気が違う。 「うん。うまくいった」ちゃんと上を向いたようだ。  もう片方のまつ毛も同じようにやり、今度は、黒い棒状のスティックの蓋を回す。ギザギザで黒くドロドロしたものが付着した先が見える。  ゆっくり慎重に下から上へ、回すようにマスカラを塗る。 「全然、違う!!」  これが、わたし? 嬉しくなってきた!  最後は目の上──わたしが一番気になっていたアイシャドー。  その前に──。  もう一度後ろを振り返り、足場をそのままに、上半身だけを伸ばして、階段の方へ耳を澄ます。足が二つ分ほどズレて完全に階段を見下ろす形で、確認をする。  そしてまた、そーっと足を軸に元の場所に戻る。 「居るわけないのにぃ~……」  いっぱい色がある。どれを塗ればいいんだろう?  水色も捨てがたい。でもピンクも可愛い。  結局、無難な黒にしようとして、それだけありきたりすぎるように感じ、薄い方の茶色にした。細い綿棒みたいなので、茶色になっている箇所をなるべく使うようにして、瞼に薄く塗った。 「きらきらしてる~」  茶色だけだと思ってたのに、中に銀色のラメが入っているみたい。  もう最高~! すっごく大人っぽい! それに綺麗。大人の女の人みたいだ。  ここで鉛筆みたいなものが、ペン立てのような丸い透明の筒の中に挿さっているのが見えた。 「これ──多分、アイライン?」  文字を見ると、やっぱりだ。  英文字でそう書いてあった。
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