6.発動

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神体へと近づいて、大きな石に手を翳す。 この石は、この地を守る結界。 本来は修復の為に翳す手も、今は違う。 この守り石に、カムナの力を注ぎ込む。 その瞬間、祠を包む岩が一つまた一つと ポロポロ崩れ始める。 慌てて私を守るように、 桜瑛は術具を取り出して指文字を描いて発火させる。 発火した炎をそのまま、 祠の空間内に瞬時に広げ結界で包み込む。 「姫様」 「ようやった。  桜瑛」 まだ……始まったばかり。 動じぬ表情で更に指示を続ける。 「この地を守護せし神はすでに息絶えているようじゃ。  それ故に、雑鬼が蔓延り(はびこり)この地を汚す。  桜瑛。  焔龍の力を持って、この地に自縛する守護神を清め、  守護神を害したものを打ち払え」 そう告げて再び、御神体の意志に手を翳して存在を示すのは 強制的にカムナの呪印によって、意識を支配された大きな狐。 真っ黒な肢体に、赤い瞳をギラリと光らせる。 「桜瑛。  このモノを浄化して歪みを正せ」 そう告げた途端に、桜瑛は焔龍を降臨させるために 儀式に入っていく。 『我は龍の力を借りたいと念じるものなり。  焔龍朱瑛。  我、呼びかけに答え我におりたまえ』 青年の姿をした褐色の人型をする焔龍が 勇ましく語りかける。 「我を呼びし、巫女よ。  何ようか」 「朱瑛。  この地の守護神に浄化を。  この地を歪みを正します」 桜瑛が朱瑛へと依頼した瞬間、 その姿は、桜瑛の中へと吸い込まれるように同化していく。 焔龍が使役している朱雀が桜瑛の肩へと降り立った。 * 焔龍よ、そなたが入ったところで カムナに蝕まれたその体で、何処まで出来よう。 姫よ……。 桜瑛ともども、焔龍も屠ってしまえ。 ソナタの優しさを踏みにじった、龍神など傍に居なくとも 私が居るだろう……。 * そんな言葉が流れ込んできた途端コントロールを失ったかのように、 一際大きく煉獄の炎が桜瑛の指先から噴射される。
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