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焔龍。
またの呼び名を火龍と呼ばれし古からの守護龍はあの日……、
私が宝さまと最後に戦った聖戦の中で失った……我力。
全ての力を使い果たし、これ以上どうすることも出来なくなった
私を守るために緋姫が奪い去った。
奪い去ったというは聞えが悪いか……。
焔龍の召喚の意思召喚することが、
違わなくなった今も私にある。
桜瑛は私の代わりに焔龍をその身に下ろすただの憑代。
器。
そう思っていた私の心を逆手に奪われた。
私は桜瑛だけを手にかけられればいいの。
焔龍は……朱瑛だけど、カムナに侵されてはいけない。
その瞬間、桜瑛と朱瑛を確実に遮断するのは一つしかなかった。
桜瑛への偽りの信頼を無にして二人の通信を遮断すること。
二人を繋げる絆が奪われれば、コンタクトすら出来ぬ二人。
桜瑛の体内を犯すカムナが、朱瑛を追い詰めることなどない。
桜瑛が、朱瑛とコンタクト出来ぬようになって戸惑いながら
必死に指文字を描き続けている。
カムナの気は満ち続ける空間。
神聖な空気は一気に暗雲が覆い桜瑛の体は、
朱瑛をおろすことも出来ず無防備なまま宙を吹き飛んだ。
そして現れたのは……式神。
その式神が現れた途端に、
桜瑛は私をそのものへと託す。
「姫様はどうぞ、徳力へ庇護を」
空間移動の間際、
岩肌に打ち付けられる桜瑛の体に崩れた岩が積み重なっていくのを感じた。
これで、あの者は消える。
邪魔者は私の前から姿を消す。
『……姫様……』
甘やかな声が心地よく心の中に染み込んでいく。
……カムナ……。
その優しさに溺れる様に意識のその中へ委ねる。
その優しい時間に身を委ねながら、
今も繋がるカムナの印から桜瑛の方を探っていく。
瞼の裏、浮かび上がる金色の鳥。
金色の鳥に向かってゆっくりと手を伸ばす。
……宝さま……。
愛しい名前を紡ぎながら。
金色の鳥は私には目もくれず、
桜瑛の元へと駆けていく。
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