7.僻野ノ涯

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ただ今一度、笑い返して欲しかった。 その願いは叶うことはない。 一つ、また一つ。 掌から零れ落ちる砂のように記憶が消えていく。 愛し続けた愛しい蜜月の時が、 ゆっくりと……零れ落ちていく。 私自身が消えていく。 どれほどに悔やんでも、どれほどに嘆いても その苦しみは……終わらない……。 その全てを飲み込み尽くすまで。 私の手は当に穢れてしまった。 愛しいものを手にかけて真っ黒に穢れてしまった。 後悔と懺悔の念だけが、 過去の私の罪に絡まって、更に奥深くへと縫いとめていく。 * ベットに眠り続ける宝さま。 そう、この時の眠りも浅はかな私が招いた。 宝さまを独占したい。 私だけのものにしたいと願った……末路。 カムナは私の望みのままに宝さまを閉じ込めた。 宝さまの専属運転手の命を盾に、 カムナの衝撃波をぶつけた。 『どんな世界でもどんな形でも共にありたい……』 そう願った私の呪と共に。 宝さまは私の意識と共にあった。 宝さまが閉ざされた世界は私が良く知った世界だから。 その世界で出口を求めて彷徨う宝さまを、 遠くから見つめているだけで愛しい気持ちは満たされていく。 この世界に桜瑛はいない……。 時折、私に気が付くのか誰もいない空間に向かって 真っ直ぐな眼差しを向ける。 それだけであの頃に戻ったようで心は躍った。 徳力からの正式の依頼を受けて秋月の姫として、 宝さまが眠る病院へと向かう。 この場所で宝さまを私が助ければ、 宝さまは私を受け入れて微笑んでくださるかもしれない。 そんな一途の望みに心を馳せる私。
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