7.僻野ノ涯

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* 目が覚めたら宝さまは、 私ではなく……桜瑛の元に行ってしまう。 宝さまをこの世界に必死に閉じ込めたいと望む私と、 宝さくを今すぐ解放してあげたい私。 どちらの私も鬩ぎあうその中で、 私の揺れ動く不安定な心のままにカムナは容赦なく力を与える。 カムナの力を受け取って、 宝さまを私だけのものにしたいと考えた……私。 病室の窓ガラスを吹き飛ばし、 カムナを介した私の呪に自らも含んで危害を加える。 全てが戯れと知りながら。 自らの内側にあるカムナの力で、 侵され続けた私は動けなくなってしまった。 ……そう……。 愚かな私の独りよがりな思いが招いた結末。 私の中に眠るカムナを宝さまが……貫き…… カムナは私の中で再び力を取り戻すために眠りについた。 何時の世か私の抱く憎悪な嫉妬を餌にして、 もう一度力を取り戻すために。 全てを知っているあの人は私を咎めることもない。 咎められることもない我が身を、 悲観し……追い詰めた時間。 そんな自らの罪もカムナによって零れ落ちていく。 寂しさが招いた愚かな時間。 それすらもカムナは飲み込んでいく。 我、罪の代償か……消えていく。 我、愛しい記憶たち……、 宝さまとの思い出が消えていく。 真っ白い雪が降り積もる。 全てを覆い包んでいく。 まだ……果てれぬ……カムナの地。 ……僻野ノ涯……。 この地で私が最後にあの方の為に 成すべきことがあると言うなら教えておくれ。 私自身の全てが融けてしまう前に。
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